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【コカトピ!】北極域研究船「みらいII」製造開始!

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文/荒舩良孝

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が建造を進めている北極域研究船「みらいII」の建造現場が4月19日にメディア関係者へ公開されました。みらいIIの建造現場が公開されるのは初めてで、将来への期待が膨らみます。

北極域の環境を調べる船「みらい」の進化形が建造中!

 北極域は地球の環境変化がいち早く現れやすい地域の1つです。その証拠に、北極域の海氷面積は年々減少しています。北極域の環境は、日本をはじめ、他の地域の気候や気象に大きな影響を及ぼします。そのため、日本は1998年から海洋地球研究船「みらい」を使って、北極域の観測や研究を進めてきました。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は北極域研究船「みらいII」をつくり、北極圏の観測をさらに進めようとしています。

JAMSTECによる「みらいⅡ」の概要。

 みらいIIは、2022年4月から詳細設計が始まり、今年から船体の製造に入りました。製造を担当しているのは、造船大手のジャパンマリンユナイテッド(JMU)。JMU磯子工場では、鋼材から船をつくる作業が進められています。

 みらいIIは完成すると全長128m、幅23mの大きな船となります。そのような船を一気に作ることができないので、必要な形状に切った鋼材を溶接し、小さなパーツを作るところから始めます。公開されたのは、船底になるパーツの一部で、建物の外にきれいに並べられていました。その様子を目にして、JAMSTEC北極域研究船推進部の赤根英介部長は「今まで図面でしか見ていなかったものが、実際のパーツになっていて、感動しました」と感慨深そうに語りました。

ここまで公開

初公開された、製造中のパーツの一部。(撮影/荒舩良孝)

 みらいIIの場合は、このような小さなパーツを250個作ります。これらのパーツはドックの横にある作業場まで運ばれ、より大きな80個のブロックへと組み立てられます。そして、80個のブロックをドックに運び、船の形状に組み上げていきます。2025年3月までには船体を組み上げ、進水させます。その後、エンジン、プロペラ、内装設備などを取り付ける作業などを経て、2026年後半には完成する予定です。

「みらいⅡ」でできることとは?

 みらいIIにはドップラーレーダ、採水装置、海洋ドローン、海上ドローンなど、いろいろな観測機器が搭載され、大気、気象、海氷、海洋など、広い分野の観測ができます。しかも、日本の研究船として初めて砕氷機能を備えているので、これまで海氷に阻まれていた北緯80度より北の海域に入って、詳しい観測ができるようになります。
 みらいIIが完成すれば、太平洋側から大西洋側まで北極域を横断した精密観測の実施も期待できます。北極域の気象、海水、海氷などは、これまであまり観測されておらず、よくわかっていないことがたくさんありました。みらいIIによって、詳しいデータがたくさん得られるようになれば、これから地球全体に起こることを、より詳しく予想できるようになるでしょう。この船が完成し、北極域を航海する日が待ち遠しいですね。

北極域研究船「みらいⅡ(ツー)」の完成イメージ。🄫JAMSTEC

荒舩良孝 著者の記事一覧

科学ライター/ジャーナリスト。科学の研究現場から科学と社会の関わりまで幅広く取材し、現代生活になくてはならない存在となった科学について、深く掘り下げて伝えている。主な著書は『地球を飛び出せ!宇宙探査』(誠文堂新光社)、『ブラックホールと宇宙の謎』(岩崎書店)、『生き物がいるかもしれない星の図鑑』(SBクリエイティブ)など。


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