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文/荒舩良孝
海底奥深くの試料を採取・分析する船
9月5日、静岡県のほぼ真ん中に位置する清水港の岸壁に、全長210mの巨大な船が停まっていました。普通の船とは違い、中央部分に青い大きなやぐらがそびえています。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部調査船「ちきゅう」です。

「ちきゅう」は海の底にある地殻に深い穴を掘り、その岩石などを研究用の試料として手に入れ、分析するための船です。中央部分にある大きなやぐらは「デリック」と呼ばれ、海底下の地殻を掘るためのドリルパイプなどを吊り下げるために使われます。
デリックはとても頑丈につくられていて、最大で1250トンのものまで吊り下げることがきます。船底からデリックの先端までの高さは、30階建てのビルに相当する130mもあります。
この日は、「ちきゅう」内部の様子がメディアに公開され、KoKaの記者がその内部に潜入してきました。船体につけられた階段で船内に乗りこむと、船内の階段を使ってデリックが設置されている「ドリルフロア」を目指しました。巨大な船だけあって、階段を昇っても、昇っても、目的地はやって来ません。ビル7階分の階段を上ると、やっと外の景色が見え、ドリルフロアに到着しました。
ここまで公開

ドリルフロアは掘削が行われる場所で、様々な機器が動き、危険もあります。そのため、この区画に入るには、専用の作業服、安全靴、ヘルメット、安全グラスを身につける必要があります。記者もそれらを身につけて、ドリルフロアに入りました。
採取したらその場で分析!
ドリルフロアにはデリックの脇には長いパイプがたくさん立てかけられています。これは掘削に使うドリルパイプです。1本10mほどのドリルパイプを4本連結した状態にして、すぐに使えるようにしてありました。
海底の地殻を掘削するときには、フロアに設置されたマンホールのような穴からパイプをつなぎ海底まで到達させます。さらにパイプをつないでいくことで、海底の地殻を掘り進めていくのです。
掘り出した地殻の岩石は円筒状に船上に引き揚げられ「コア」と呼ばれる研究試料となります。「ちきゅう」にはコアをすぐに分析できるように、様々な分析機器を備えた研究室も設置されています。

手に入れたコアは、病院などでも使われるX線CTスキャナーや物理特性計測装置などを使って内部の様子を確認します。そして、重要なところを切り出し、詳しく分析していきます。

今後の調査では日本海溝へ
「ちきゅう」は9月6日から新たな研究航海に出発しました。2011年に東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震が発生した日本海溝を再び調査します。
この場所は海のプレートである太平洋プレートが、陸のプレートである北米プレートの下に沈みこむプレート境界です。巨大な地震が発生してから13年経過した現在、このプレート境界がどのように変化しているのかを調べます。「ちきゅう」の研究航海から、どんなことが発見されるのか、注目していきましょう。
文