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文/井上榛香
日本人が初めて月面に降り立つ日が近づいてきています。アメリカ航空宇宙局(NASA)が中心となって進める月面探査プログラム・アルテミス計画で少なくとも2人の日本人宇宙飛行士が月面着陸することをアメリカと日本の政府が決めました。
アポロ計画とアルテミス計画の違いは?
有人月面着陸といえば、「アポロ計画」や「アポロ11号」を知っている読者も多いでしょう。1961年から1972年にかけて、NASAは月への有人飛行を目指すアポロ計画を行い、1969年にアポロ11号で人類史上初の有人月面着陸に成功しました。アポロ計画では6回の月面着陸で12人の宇宙飛行士が月に降り立ち、約382kgの月の石や砂が地球へ持ち帰られました。
アポロ計画以来の有人月面着陸となるアルテミス計画では、月の周りを周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ」や月面基地を建設し、人類の月での持続的な滞在と将来の有人火星探査への足がかりをつくることを目指します。アメリカだけでなく、日本やカナダ、ヨーロッパなどと協力しながら進めていくこともアルテミス計画の特徴です。
アルテミス計画については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
ここまで公開
宇宙飛行士たちは、アメリカが開発するオリオン宇宙船に乗って月へ向かいます。2022年には無人のオリオン宇宙船を打ち上げ、月を周回したのちに地球に帰還させる試験・アルテミスⅠが行われました。2025年9月以降にはオリオン宇宙船に4人の宇宙飛行士が乗って月を周回する試験・アルテミスⅡが行われる予定です。

その次はいよいよアルテミスⅢで有人月面着陸が行われます。オリオン宇宙船と有人着陸システム「Starship HLS」が月軌道上でドッキングして、宇宙飛行士たちは月面へと向かいます。日本人宇宙飛行士の初の月面着陸は、早ければ2028年頃 にアルテミスⅣで行われる見込みです。
また、日本は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とトヨタ自動車が共同で開発する、月面探査車・与圧ローバー(愛称ルナクルーザー)を提供し、運用することが決まりました。


アポロ計画では宇宙飛行士たちは宇宙服を着たままローバーに乗り込んでいました。開発中のルナクルーザーは、車内が人に適した気圧に保たれているので、2人の宇宙飛行士が宇宙服なしで、約1か月間生活しながら月面を探査できる宇宙船のような車です。遠隔操作で月面を探査することもできます。
月を周回する宇宙ステーションの開発も進行中!
月面と火星に向かう中継基地としての役割を担うゲートウェイの構築に向けた開発も着々と進んでいます。
ゲートウェイは、国際宇宙ステーション(ISS)の6分の1ほどの大きさ。電力を供給する「電気・推進エレメント(PPE)」、ミニ居住棟「居住・ロジスティクス拠点(HALO)」、ゲートウェイの心臓部分にあたる「国際居住棟(I-Hab)」などから構成され、PPEとHALOは2025年以降に打ち上げられる予定です。
開発はNASA、JAXA、カナダ宇宙庁、ヨーロッパ宇宙機関、アラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターが協力して行います。日本はI-Habの生命維持・環境制御システムと、ゲートウェイへの新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)を活用した物資の補給、さらにHALOへのバッテリーの提供などを担当します。

ゲートウェイには4人の宇宙飛行士が年間30日ほど滞在することが想定されています。
なお、JAXAは2021年から2022年にかけて宇宙飛行士候補者の募集と選抜試験を行い、2023年3月に諏訪理さんと米田あゆさんが選ばれました。今回はアルテミス計画で活躍することを想定して、月面を模した砂場があるJAXA相模原キャンパスの「宇宙探査フィールド」が選抜試験を舞台に、月面に初めて降り立った宇宙飛行士が記者会見にのぞむという設定で英語のプレゼンテーションを行う試験も行われました。

JAXAは今後も5年に1回程度の頻度で宇宙飛行士候補者の募集を行う計画です。読者の皆さんも、将来月面やゲートウェイで活躍できるチャンスがあるかもしれませんね。
文