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文/井上榛香
登山中のケガや急病など、携帯電話の電波が届かない場所で緊急事態に巻き込まれたときなどに、人工衛星を経由してSOSを発信するiPhoneの新しい機能が日本でも使えるようになりました。この衛星経由のSOS機能は、2022年に登場し、アメリカとカナダでサービスの提供が始まりました。その後、ヨーロッパやオセアニアなどの地域でもサービスが提供されるようになり、現在は16カ国で使用されています。
衛星通信が注目されているわけ
一般的な携帯電話は、全国各地に建っている基地局を通じて通信を行っています。しかし、電源を供給することが難しい場所、例えば山と山の間などには基地局を建てられず、電波が届きにくくなってしまいます。あるいは、大きな災害が起きると、基地局が壊れてしまったり、電気が止まったりして、電波が届かなくなってしまうこともあります。
そんな場合に備えるために注目されているのが衛星を使った通信です。例えば、アメリカのSpaceX社は通信衛星を約6000機打ち上げて作ったインターネット通信サービス「スターリンク」は、能登半島地震の被災地でも使われました。iPhoneを販売しているApple社は、衛星を運用するGlobalstar社と協力して、衛星を宇宙にどんどん打ち上げています。
iPhoneの衛星経由のSOS機能は、画面に表示されるガイドにしたがって、上空を飛んでいる衛星の方向にiPhoneを向けると、衛星中継センターのスタッフに位置情報を共有したり、チャットで状況を伝えたりできます。この情報をもとにスタッフが消防などに救助を求める仕組みになっています。Apple社が開発した部品やソフトウェアにより、大きなアンテナなどの特別な装置は使わずに衛星と接続できるので便利です。
ここまで公開
デモ機能を試してみたら
この機能はiPhone 14シリーズ以上の端末で、アクティベーションを行ってから2年間無料で利用できます。実際に衛星に接続して使い方を確かめることができるデモ機能があると聞いて、iPhone 14ユーザーの筆者も試してみました。デモ機能は、iPhoneの「設定」→「緊急SOS」→「衛星経由の緊急SOS(デモを試す)」から始めることができます。もし表示されないときは、端末が「iOS 17.6」以上にアップデートされているか確認してみてください。
デモが始まると、まずはiPhoneを空に向けて、衛星との接続を行います。はじめは、私(=筆者)は木の下にいたので、信号がさえぎられてしまい、うまく接続できませんでした。

画面のガイドにしたがって、木の下から移動してみると……接続成功!

次は、チャットで今いる場所の情報をわかりやすく説明してくださいというメッセージが届きました。これに対して「〇〇公園の近く」と打ち込んで送信ボタンを押しました。「送信中」と表示されて、実際に送信されるまでには10〜20秒程度かかったように感じました。普段使っているネットワークよりも、やはり少し時間がかかるようですが、緊急時に簡単なメッセージを送るのには十分だと思えました。Apple社とGlobalstar社は、今後もさらに衛星を打ち上げる計画なので、より便利になることを期待したいです。
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