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【コカトピ!】巨大魚竜の化石を発見!

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文/土屋 健

全長25mもの魚竜類が見つかった!

 一般に「恐竜時代」として知られている中生代は、約2億5200万年前に始まり、約6600万年前まで続きました。この時代は、古い方から「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」という3つの時代に分けられています。中生代は、「恐竜時代」という“別名”からわかるように「恐竜類の繁栄」もありましたが、実際には、恐竜類に限らず、さまざまな爬虫類が繁栄した時代でした。

 中生代に栄えた爬虫類の一つに、「魚竜類」がいました。「竜」という文字を使っていますが、魚竜類と恐竜類にはとくに大きな関係はありません。魚竜類は、三畳紀が始まってまもなく出現し、瞬く間に多様化しました。そして、白亜紀の半ばに絶滅しています。

 多くの魚竜類の姿は、細く突出した口先、鰭となった四肢と尾鰭というものです。進化した種は、現生のマグロのような姿になったことで知られています。

 このたび、ブリストル大学(イギリス)のディーン・R・ローマックス博士たちは、イギリス南西部に分布する三畳紀(約2億5200万年前〜約2億100万年前)の末期の地層から化石が発見された新種の魚竜類を報告し、「イクチオタイタン・セヴァーネンシス(Ichthyotitan severnensis)」と名付けました。「Ichthyo」はギリシア語で「サカナ」という意味ですが、魚竜類の名前にも使われることがある言葉です。「titan」には「巨人」という意味があり、「Ichthyotitan」で「巨大な魚竜類」となります。「severnensis」は化石が発見された「セヴァー川」にちなんでいます。

 イクチオタイタン・セヴァーネンシスの化石は部分的なものだけでした。しかし、博士たちはこの化石を分析し、その全長は25mに達する(少なくとも、20〜26mの範囲内にある)と見積もりました。学校の25mプールにギリギリ入る大きさであり、知られている魚竜類の中では最大級です。そして、知られている海棲爬虫類の中でも、最大級となります。

最後の巨大魚竜?

 魚竜類の歴史を振り返ると、三畳紀が始まったばかりの約2億4800万年前に登場しました。初期の魚竜類は、全長数mほどの小型種ばかりでした。しかしわずか200万年ほどで、全長18m級の大型種が登場しています。

ここまで公開

 それから4000万年ほどで、さらに大きなイクチオタイタン・セヴァーネンシスの登場です。魚竜類にみられるこの大型化は、三畳紀の海で、魚竜類がいかに繁栄していたのかを物語る例といえるでしょう。

 ところが、約2億100万年前に三畳紀が終わり、ジュラ紀が始まると、こうした魚竜類の大型種は姿を消しました。魚竜類というグループ自体は、多様化を続け、子孫を残していくのですが、大型の種は、ジュラ紀以降は出現しないのです。ちなみに、ジュラ紀の海では、クビナガリュウ類が多様化し、大型化していくことになります。

 実は、三畳紀末に大量絶滅事件がありました。この大量絶滅事件は、「多くの種が滅んだ」ということはわかっているのですが、詳しいことはまだ謎に包まれています。魚竜類の大型種が三畳紀末に姿を消し、のちの時代の魚竜類が中型以下であるということは、この大量絶滅事件の謎を紐解く手がかりになるかもしれません。

 今のところ、イクチオタイタン・セヴァーネンシスは、「最大級の魚竜類」であると同時に、大量絶滅事件前に生息していた「最後の巨大魚竜」でもあります。大量絶滅事件との関係性が気になるところです。

 ただし、そんなイクチオタイタン・セヴァーネンシスも、発見されている化石は、下顎の一部だけです。博士たちの推測にも「20〜26mの範囲内」とあるように、その大きさも、実は「巨大である」ということ以外は、あまりよくわかっていません。

 博士たちは、イクチオタイタン・セヴァーネンシスのことをもっと知るために、より多くの化石を探しているようです。この研究を発表した論文の最後で、新たな化石をみつけた場合は、博士たちまで知らせてくれるように呼びかけています。

発見された部分化石。AとCは同じ標本の表裏で、BとCが同じ標本の表裏。いずれも下顎の一部。こうした部分化石でも、全長値をある程度は推測することができる。(© 2024 Lomax et al 論文より引用)

論文

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オフィス ジオパレオント代表。サイエンスライター。2003年、金沢大学大学院で修士(理学)を取得。科学雑誌『Newton』の編集記者、部長代理を経て独立。現在は、地質学や古生物学を中心に執筆活動を行なっている。著作多数。2019年にサイエンスライターとして史上初めて、日本古生物学会貢献賞を受賞。


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