【コカトピ！】マーキングするネコの尿が強い悪臭を放つのはなぜ？

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文／斉藤勝司

強烈な匂いを発するスプレー尿

　ネコは自分の存在を他のネコに知らせるためにマーキングという行動をとります。尾を上げて壁などの垂直の構造物に尿を吹きかけるのですが、こうした壁などに吹きかけられた尿はスプレー尿と呼ばれています。通常の尿でも十分に臭いのに、スプレー尿のさらに匂いが強烈で、住宅街では悪臭問題の原因なることがあるほどです。
　通常の尿よりも臭い原因については、肛門付近にある分泌腺（肛門腺）から出る悪臭成分がスプレー尿に混ざっているからだ…と言われたことがありましたが、スプレー尿と通常の尿に含まれる匂い成分を詳しく比較した研究は報告されていません。そこで岩手大学の研究グループはスプレー尿のほうが臭い原因を明らかにする研究に取り組みました。

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壁に広く付着することで悪臭は強くなっていた！

　研究グループは、まず7匹の猫からスプレー尿と通常の尿を採取し、匂い成分を比較するも、大きな違いは認められませんでした。ただし、スプレー尿と通常の尿を採取する時間差によって成分が変化した可能性は否定しきれません。そのため2匹のネコを対象に、スプレー尿を採取した直後に、膀胱に管を挿入して尿を採取して、スプレー尿と比較しましたが、それでも匂い成分に違いは確認できませんでした。
　ネコに両方の尿を嗅ぎ分けさせる実験を行うと、ネコはスプレー尿と膀胱から採取した尿を判別できなかったことから、研究グループは匂い成分の違いが原因ではないと考え、次にネコの尿に大量に含まれるコーキシンと呼ばれるタンパク質に注目。コーキシンが尿の匂いにどう影響するかを調べました。
　その結果、コーキシンが含まれることで尿は垂直の壁に付着しやすくなり、流れ落ちながら壁面に広がり、悪臭の原因となる成分を空気中に放つことが分かりました。一方、通常の尿は地面に放出されるため、コーキシンを含んでいても広がることはなく、尿は地面を覆う土や砂に染み込んでしまいます。尿に含まれる匂い成分に違いはなくてもスプレー尿のほうが広い面積から匂い成分を放つことで、悪臭がより強くなることが明らかになりました。

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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学（現東京海洋大学）卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。