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【コカトピ!】雲の内部構造を観測する人工衛星「はくりゅう」が宇宙へ

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文/井上榛香

 日本とヨーロッパ宇宙機関が共同で開発した人工衛星「アースケア(愛称はくりゅう)」が5月29日、アメリカから打ち上げられました。はくりゅうは地球周回軌道上に投入され、観測に向けた準備を進めています。

©︎ESA – P. Carril

はくりゅうの役割は?

 衛星にはさまざまな種類がありますが、はくりゅうは宇宙から地球の様子をモニタリングする地球観測衛星に分類されます。搭載されているセンサで、雲や、大気中に存在するほこりやちりなどの微粒子(エアロゾル)の分布や鉛直構造などを観測します。

©︎ESA/ATG medialab

 気候変動予測はコンピューターによるシミュレーションで行われていますが、気候変動に関係する自然現象がすべて明らかになっているわけではなく、予測の誤差が生じています。特に、地球大気の放射収支における雲やエアロゾルの効果は十分に分かっていません。はくりゅうは雲全体の内部構造を観測することができ、雲やエアロゾルが気候変動に与える影響の解明に役立てられると期待されています。

ここまで公開

 はくりゅうには4つのセンサが搭載されています。

 日本が開発した「雲プロファイリングレーダ」は、雲粒の大きさや水分量、雲の鉛直構造を観測するほか、衛星としては初めて地球全体の雲粒の上昇速度や下降速度などを測定し、雲の中の対流の様子を明らかにします。

©︎ESA/ATG medialab

 ヨーロッパ宇宙機関は、雲プロファイリングレーダでは観測できない小さなエアロゾルやごく薄い雲の鉛直構造を調べる「大気ライダー」、雲やエアロゾルの水平方向の構造を把握する「多波長イメジャー」、太陽光の反射や地球からの熱放射の総エネルギー量を測る「広帯域放射収支計」を開発しました。

 なお、はくりゅうは太陽光パネルやアンテナを広げると大きさは17.2mになります。はくりゅうという愛称は、白くて長い太陽光電池パネルが白龍のしっぽのように見えることから名付けられました。

©︎ESA/ATG medialab

人工衛星「しきさい」と「いぶき」も活躍中

 地球観測衛星の特徴のひとつは、宇宙から地表や海面を広範囲に観測できることです。近年は地球環境を守るために、はくりゅうだけではなく、さまざまな地球観測衛星が打ち上げられ、活躍しています。

 気候変動を観測する衛星「しきさい」は2017年に打ち上げられ、現在も観測が行われています。しきさいが観測した日本周辺の海面温度や海氷・積雪の分布、海面に分布する植物性プランクトンなどに含まれるクロロフィルa濃度などのデータは宇宙航空開発研究機構(JAXA)のポータルサイトから見ることができます。

 二酸化炭素やメタンなどの濃度分布を宇宙から観測する衛星「いぶき」は2009年に打ち上げられました。温室効果ガスの濃度を測る専門の衛星はいぶきが世界で初めてでした。「いぶき2号」は2018年に打ち上げられ、現在も観測が行われています。2号に続く「いぶき3号」の打ち上げも予定されています。

 ここでは日本の地球観測衛星を紹介しましたが、はくりゅうやしきさい、いぶきのような環境を守るのに役立つ衛星は世界中で続々と打ち上げられています。

井上榛香 著者の記事一覧

宇宙開発や宇宙ビジネスを専門に取材・執筆活動を行うフリーライター。小惑星探査機「はやぶさ」の活躍を知り、宇宙開発に関心を持つ。学生時代は、留学先のウクライナ・キーウで国際法を学んだ。共著に『from under 30 世界を平和にする第一歩』。


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