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【コカトピ!】コアラが餌のユーカリを選り好みする理由を解明

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文/斉藤勝司

ユーカリは種類により消化しやすさ、毒物が異なる

 愛らしい姿で私たちを楽しませてくれるコアラは、オーストラリア東部の生息地では、そこに自生するユーカリの葉を食べて暮らしています。コアラを飼育している動物園ではユーカリの葉を用意しなければならないのですが、一口にユーカリと言っても、実は数百種類もあり、種類によって消化しやすさや葉に含まれる毒物が異なります。

 そのためコアラは消化しやすく、毒物を無害化しやすい種類を選んで食べていて、こうした選り好みには消化を助ける腸内細菌や、毒物を無害化する酵素が関わっていると考えられています。しかし、選り好みの詳しい理由は明らかになっていなかったことから、北海道大学、北里大学、鹿児島市平川動物公園の研究グループは、日本で飼育されているコアラを対象にユーカリの選り好みを研究しました。

 オーストラリアでは地域によってユーカリの種類が異なるため、研究グループは日本にいるコアラがどこからやってきたのかが重要になると考えました。細胞内でエネルギーの生産に関わるミトコンドリア中のDNAの遺伝情報を解読し、オーストラリア東部のどの地域に由来するかを判定しました。

ここまで公開

母親が排せつした糞を食べて腸内細菌を受け継ぐ

 腸内細菌については、コアラが排せつした糞から細菌を抽出し、コアラそれぞれがどんな腸内細菌を持つのかを調べ、さらに5種類のユーカリを同時に与え、30秒ごとにどのユーカリを食べるのか記録。これらのデータをもとに生息地域、腸内細菌、ユーカリの選り好みの関係を分析しました。

 その結果、コアラの生息地はミトコンドリアDNAの分析で四つの地域(北部1、北部2、中部、南部)に分けることができ、今回、研究対象としたコアラは北部2、中部、南部のいずれかの地域に属することが分かりました。

 また、コアラの腸内には約100種類もの細菌がいて、種類数や腸内にいる細菌の種類はコアラごとで大きく異なっていました。ただし、コアラは乳児期に母親が排せつした「パップ」と呼ばれる盲腸便を食べて、母親から腸内細菌を受け継ぐことから、母子ではよく似た腸内細菌を持っていることも確認されました。5種類のユーカリに対する選り好みもコアラそれぞれで異なっていて、日本で飼育されているコアラの由来地域、腸内細菌、ユーカリの好みはお互いに関係があることが分かりました。

 特定のユーカリを好むコアラの腸内だけに多い細菌があることもわかり、今後、コアラの腸内細菌を調べてから、餌として与えるユーカリを選べば食べ残しを減らすことができるようになるかもしれないと考えられています。

今回の研究で調査対象になったコアラ6頭のうちの1頭「ヒマワリ」。鹿児島市平川動物公園で見ることができる。(©鹿児島市平川動物公園ホームページ)

プレスリリース

斉藤勝司 著者の記事一覧

サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。


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