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【コカトピ!】ゾウはヒトのように「名前」で呼びかけていた!? 

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文/保谷彰彦

ゾウのゴロゴロ音のヒミツ

 ゾウの鳴き声というと、「パオーン」という大音量のトランペットのような音を想像する人も多いと思います。しかし実際には、ゾウの鳴き声のほとんどは「ゴロゴロ」という深く響くような低周波の音で、喉から出るうなり声のようなものです。その「ゴロゴロ」音の一部はヒトには低すぎて聞き取れません。こうした低周波の鳴き声は、個体ごとに違いがあることなどから、ゾウ同士のコミュニケーションに役立っていると考えられてきました。

 このほど、コロラド州立大学(アメリカ)などの研究グループは、アフリカゾウの低周波の鳴き声には、相手を特定する「名前」のような要素が含まれていることを発見しました。さらに録音された鳴き声を再生すると、ゾウは他のゾウに向けられた呼びかけに比べて、自分に向けられた呼びかけの方が、より素早く音源のスピーカーに近づき、より大きな声で反応することが観察されました。その違いは明らかで、ゾウは自分宛ての呼びかけに対して、平均すると128秒早く音源に近づき、87秒早く発声し、2.3倍多く発声したのです。これらの結果は、ゾウが自分宛ての呼びかけを個別に認識していることを示しています。

ここまで公開

「真似」ではなく「名前」で呼びかける

 今回の研究では、1986年から2022年の間にケニアのアンボセリ国立公園、サンブル国立保護区、バッファロースプリングス国立保護区で、野生のアフリカゾウの群れが発した469の鳴き声を録音して、それらを機械学習法で分析しました。その結果、アフリカゾウは、相手と「名前」で呼び合う可能性が高いことが明らかになったのです。

 これまでに、イルカやオウムが相手の特徴的な鳴き声を真似ることで、お互いを 「名前」で呼び合うことが知られていました。それらとは対照的に、アフリカゾウはヒトと同じように、しかし他の動物とは異なり、相手の鳴き声を真似することなく、お互いにそれぞれの「名前」で呼び合う可能性があることがわかったのです。

 研究グループでは、今後、ゾウの鳴き声の中のすべての情報からゾウの「名前」を切り離す方法に取り組むそうです。ゾウの「名前」の謎が解き明かされれば、ヒトの言語の進化を解明することにも役立つと期待されます。

ケニアで撮影されたアフリカゾウ。
Thomas Fuhrmann, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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植物学者、文筆家。博士(学術)。主な著書は『ワザあり! 雑草の生き残り大作戦』『身近な草花「雑草」のヒミツ』(共に誠文堂新光社)、『タンポポハンドブック』『生きもの毛事典』(共に文一総合出版)、『ヤバすぎ!!! 有毒植物・危険植物図鑑』『有毒! 注意! 危険植物大図鑑』(共にあかね書房)、『わたしのタンポポ研究』(さ・え・ら書房)など。中学校教科書「新しい国語1」(東京書籍)に「私のタンポポ研究」掲載中。 https://www.hoyatanpopo.com/


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