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文/保谷彰彦
「生きた化石」とは?
古代の祖先から誕生して以来、その姿がほとんど変化していない種は「生きた化石」といわれます。種によっては数千万年、ときには数億年もの間、外見の変化があまり見られません。シーラカンスやカブトガニ、イチョウ、ゴキブリなどはその代表例で、古代の化石とあまり変わらぬ姿をしています。
「生きた化石」という言葉は、1859年にチャールズ・ダーウィンが、彼の著書『種の起源』で初めて用いました。ダーウィンが「生きた化石」と認めた生き物の中には、ガーという古代魚もいました。ガーは鼻先のとがった独特の姿をした魚類で、ジュラ紀の最古の化石種ガーと現生種ガーとは姿がほぼ同じです。
なぜ「生きた化石」は姿があまり変わらないのでしょうか? これまで、そのメカニズムについて、はっきりとした証拠がありませんでした。
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「生きた化石」ガーのゆっくりとした進化速度
このほど、イェール大学(アメリカ)を中心とする研究グループは、ガーは遺伝子のDNA配列が変化する進化速度が圧倒的にゆっくりであることを明らかにしました。この研究では、魚類を含めた481種の脊椎動物を対象に、遺伝子のDNA配列1,105か所の領域が比較されました。
どのくらいゆっくりかというと、1000万世代あたりにDNA配列が変化する率(突然変異率)は、ヒトを含めた有胎盤類では約0.02回、両生類では0.007回なのに対して、ガーでは0.00009回でした。
「生きた化石」とされる生き物の中には、遺伝子の変化が極端に遅くはないものも知られていますが、ガーのように極めて進化の速度が遅い「生きた化石」の場合には、突然変異が起こりにくいというメカニズムがあるようです。
今回の成果は、生物の多様性をよりよく理解するのに役立つだけでなく、将来的には医学研究に応用されて、人間の健康を改善する可能性もあると研究グループでは考えています。

【wikimediaより引用。スポッテッドガー(Lepisosteus oculatus):撮影者 Brian Gratwicke氏。】
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