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文/保谷彰彦
ボノボは平和的?
ヒトに最も近縁な野生動物はチンパンジーとボノボです。それら両種を比べると、外見はよく似ていますが、野生での社会や行動には違いがあります。たとえば、チンパンジーは攻撃的でオスが優位な社会を作るのに対して、ボノボは平和的でメスが優位な社会を作ることが知られています。
ところが、ボノボとチンパンジーの攻撃性について調査したこれまでの研究は、それぞれ観察方法が異なっていたため、両種を比べたときに曖昧なところが残されていました。
そこで、トゥールーズ第一大学(フランス)を中心とする研究グループは、コンゴ民主共和国に棲む3集団12頭のボノボと、タンザニアに棲む2集団14頭のチンパンジーの行動を、起きてから夜寝るまで一日中尾行するように追跡して、彼らの行動をすべて記録しました。こうして、初めて同じ観察方法で両種の行動が比較されました。
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オス同士では攻撃的なボノボ
その結果、ボノボの社会ではメスがオスよりも優位であることから、ボノボはチンパンジーよりもオスからメスへの攻撃率が低く、メスからオスへの攻撃率が高いことがわかりました。一方で、意外なこともわかりました。ボノボのオスは、自分たちの集団内では、チンパンジーのオスよりも攻撃的であることが多かったのです。実際にボノボはチンパンジーより2.8倍攻撃的でした。
とはいえ、その攻撃の相手には違いがありました。ボノボのオスは、ほとんどが他のオスに対してのみ攻撃的だったのに対して、チンパンジーはメスに対して攻撃的でした。なお、ボノボのオス同士の争いは主に1対1のもので、互いに殺し合うことはなく、縄張り意識もないようです。
そして、どちらの種でも、攻撃的なオスの方が交尾の機会が多いこともわかりました。必ずしも優しいオスがモテるわけではないようです。

【Wikimedia Commonsより引用。撮影者:natataek氏。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Apeldoorn_Apenheul_zoo_Bonobo.jpg】
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