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【コカトピ!】ウミウシに擬態する新属、新種のゴカイを発見!

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文/斉藤勝司

昆虫に比べてゴカイの擬態の研究が進んでいない

 自分以外の生き物のほか、岩、砂といった周囲にあるものに似た姿形になって、外敵に見つけられにくくするなどの利益を得ることは擬態と呼ばれ、古くから盛んに研究されてきました。ただし、昆虫の擬態の研究が進んでいる一方で、海の生き物、特にゴカイの擬態については、ほとんど研究は進んでいないと言われています。

 そこで名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の自見直人博士 は、マレーシア、ロシア、スペインの研究機関と共同でゴカイの擬態に関する研究に取り組みました。同大学の附属臨海実験所がある三重県の菅島のほか、和歌山県の古座、ベトナムの3地点で調査を行い、とても変わった姿をした新属、新種のゴカイ、ケショウシリスを発見しました(写真1) 。

写真1 名古屋大学などの研究グループによって発見された新属、新種のゴカイ、ケショウシリス。(画像提供/自見直人先生)

ここまで公開

毒を持つウミウシに擬態して外敵の捕食を免れていた

 このゴカイはウミトサカ(写真2) と呼ばれるサンゴと共生しているのですが、通常、別の生き物に共生する生き物の多くは、共生相手の体に溶け込むように、よく似た色、形になります。ところが、ケショウシリスはウミトサカと異なる色、形をしています。また、分類上近い種類のゴカイと比べて、「触手」と呼ばれる体にある複数の突起が大きくなりミノウミウシと同じカラーパターンになることやウミウシ同様大きいものと小さいものが繰り返されることが異なり、その役割は分かっていませんでした。

写真2 ケショウシリスが共生しているサンゴの一種ウミトサカ。(画像提供/自見直人先生)

 そこで研究グループが周辺の海域で調査を行ったところ、ケショウシリスによく似たウミウシがいることが明らかになりました(写真3) 。ケショウシリスの触手はウミウシが持つミノと呼ばれる突起に非常に似ていて、大きな触手と小さな触手が交互にあったり、先端が白くなっていたりしてそっくりです。他のゴカイに見られる足先の毛が体内にしまわれていることも、ウミウシの姿に近づけているように思われます。

写真3 左が写真1のケショウシリス、右が生息海域の周辺にいるウミウシ。ミノと呼ばれる突起の先端に毒をため込んでおり、ウミウシに擬態することで、ケショウシリスは毒があるように見せかけて、外敵による捕食を免れていると考えられた。(画像提供/自見直人先生)

 しかし、ウミウシはミノの先端部分に毒をため込んでいるのに対して、ケショウシリスの触手には毒はありません。そのためケショウシリスは毒をもつウミウシに擬態し、毒があるように見せかけることで外敵による捕食を免れているのだと考えられました。

プレスリリース

斉藤勝司 著者の記事一覧

サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。


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